「妊娠中はカフェインを控える」
これは女性にとっては常識と言っても過言ではないほど、よく知られた情報です。では、なぜ摂取を控えるべきなのでしょうか。また、具体的にどのような規定がなされているのでしょうか。
今回は、妊婦のカフェイン摂取量の危険性と上限値、そして青汁の摂取可否について説明していきます。
なんで危険?妊婦がカフェインを控えるべき理由
妊婦がカフェインを控えるべき理由については様々な研究がなされてきました。そうした研究結果により注意喚起されている主なリスクは下記の通りです。
・流産 ・母体におけるカルシウムや鉄、亜鉛など必要栄養素の吸収阻害 ・胎児が低体重で出生する ・胎児の脳の発達障害 ・胎児の体への負担 ・出生後の成長過剰 |
カフェインは胎盤を通じて容易に胎児へと届けられてしまいます。赤ちゃんは大人の約16~20分の1の大きさですので、カフェインの許容量も大人とは大きく異なります。加えて、赤ちゃんはまだ肝臓の機能が十分に成熟していないため、カフェインを代謝することが難しく、体内に蓄積していってしまうのです。これにより、上記のような様々な危険にさらされてしまう、というわけです。
また、カフェインには利尿作用および尿中にカルシウムなどのミネラル類を排出してしまうといった側面があります。これにより、母体からカルシウムを吸収して骨や歯を形成している赤ちゃんにとってもダメージが生じますし、母体も普段以上のカルシウム量が必要な時期ですので影響があると言われています。
カフェインが与える影響は、胎児がお腹の中にいるときだけにとどまりません。ノルウェー公衆衛生研究所が発表した研究結果によると、妊娠中にカフェインを過剰摂取した女性の子供は、1歳になるまでに成長過剰になるリスクが66%も高くなったと報告されています。つまり、妊娠中のカフェイン過剰摂取は、出生後の子供にも影響を与えることが危惧されるのです。
妊婦のカフェイン摂取量の上限値は?
妊婦が摂取していいとされるカフェイン量については、機関によってさまざまな見解がありますが、まとめると以下の通りです。
機関名 | 規定内容 |
---|---|
世界保健機関(WHO) | 1日 300mg以下(コーヒー3~4杯相当) |
英国食品基準庁(FSA) | 1日 200mg以下(コーヒー2杯相当) |
カナダ保健省(HC) | 1日 200mg以下(コーヒー2杯相当) |
日本 | 特に規定なし |
まず、WHOが2001年に発表した「Healthy Eating during Pregnancy and Breastfeeding (BookletFor Mothers)2001」(日本語訳すると『妊娠中および授乳中の健康的な食事』)では、お茶、ココア、コーラタイプの飲料はそれぞれほぼ同程度のカフェインを含んでおり、コーヒーはその約2倍のカフェインを含んでいることから、妊婦はコーヒーを1日3から4杯までにするようにと呼びかけています。
また、イギリスの食品基準庁が2008年に公表した情報によると、妊婦がカフェインを取り過ぎることにより、生まれてくる赤ちゃんが低体重となり、将来の健康リスクが高くなる可能性があるとして、妊娠した女性に対して、1日あたりのカフェイン摂取量を、コーヒーをマグカップで2杯程度に制限するよう求めています。これはWHOよりも厳しい基準です。
同様に、カナダの保健省も2010年に1日あたりのカフェイン摂取上限量をコーヒー2杯程度と規定しています。
しかしながら、妊婦や胎児に影響を及ぼすカフェイン量については様々な見解がなされていて、厚生労働省の公式HPでも、こうした他国の発表した規定が紹介されていますが、具体的に厚生労働省の推奨量というものは見つけることができません。
つまり、それだけ今後も変動しうる数値や内容であるということです。
各飲料に含まれるカフェイン量
カフェインの摂取上限量はわかりましたが、私たちがよく口にする飲み物にはどの程度のカフェインが含まれているものなのでしょうか?
主な飲料のカフェイン値比較
まずはよく口にする飲料のカフェイン量を比較してみましょう。
飲料名 | カフェイン濃度 |
---|---|
カフェインを添加した清涼飲料水 | 32~300mg / 100mL |
インスタントコーヒー | 60~80mg / 100mL |
紅茶 | 30mg / 100mL |
玉露茶 | 160mg / 100mL |
煎茶 | 20mg / 100mL |
ほうじ茶 | 20mg / 100mL |
ウーロン茶 | 20mg / 100mL |
玄米茶 | 10mg / 100mL |
コーヒーはカフェインを多く含む飲料として有名ですが、実はエナジードリンクなどにもカフェインは多く含まれており、中にはコーヒー以上にカフェインを含むものも存在します。また、一口に「緑茶」と言っても、煎茶(茶葉を湯に浸して煎じて飲む緑茶)であれば20mgと比較的微量なのに対し、玉露茶になるとその8倍の160mgにまで膨れ上がります。
カフェインが含まれている可能性のある青汁の見極め方
では、青汁はどうでしょうか?
青汁にカフェインが含まれているか否かについて判断するには、まず青汁の原料に着目する必要があります。例えば、ケールや明日葉、桑の葉などの野菜を主原料にしている青汁に関してはカフェインがない、あるいは少ないと予想されますし、逆に原料に緑茶を含む青汁についてはカフェインを含むことが推測されます。
なお、青汁の一包あたりの平均量は3gほど。3gの内訳は詳しく記載されていないことが多いので、原材料表示を見て推測するしかありませんが、仮に3分の1を煎茶が占めていたとしても、その量は1g程度です。煎茶の茶葉を10g抽出した場合のカフェイン量は約20mgですので、単純に20mg÷10と計算することができれば楽ですが、青汁の場合は粉末状で言わば葉っぱごと摂取することになるのでカフェイン量は多少増えることが予想されます。とはいうものの、カフェインは水にはやや溶けにくいですが、抽出温度を上げることで成分の溶解度は高まります。したがって、煎茶をお湯で抽出した場合、お湯の温度にもよりますが、茶葉そのものを摂取した場合に近い量のカフェインを摂取している可能性があります。たとえ青汁の原料にカフェインを含むものが用いられているとしても、毎日何杯も摂取しない限り、カフェインの影響は小さいと考えられるでしょう。
こんな商品には注意!
商品パッケージを見て、「妊娠および授乳中の方はお控えください」などと明確に飲用中止を求める旨の記載がある場合は、何かしらの危険性があるかもしれないので、控えるに越したことはないと考えられます。
また、原材料は多く含まれている順に左から記載作用えているので、緑茶などカフェインを含む原料が原材料表示の左側に記載されているものは控えるのが賢明です。
妊娠中は体調が不安定であることや、まだその危険性や影響が解明され切ってはいないため、極力カフェインを摂りたくないとのお考えを持つ妊婦さんも多いと思います。また、カフェインだけでなく、予期せぬものに反応して気分が悪くなることもあります。そのため、摂取する場合はカフェインの量および体質との相性を見ながら、少量から始めることをオススメいたします。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
妊娠中は胎児へどんな影響があるか分からないため、体内に取り入れるものに対して神経質になることもありますよね。もちろん赤ちゃんとお母さんの健康が第一なので、注意しすぎることはありませんが、神経質になりすぎてストレスを抱えるのも体に良くはありません。
カフェインについては上記で紹介した各飲料に含まれる量を正しい知識として頭に入れておくだけで、普段飲むものの判断を安心して行うことができます。
また、飲み物で少しでも多くの栄養素を摂るという意味で、カフェインが少ない、あるいはノンカフェインの青汁を選んで、日々の飲み物から栄養補給を心がけるのもよいのではないでしょうか。
あくまでも、ご自身の体を第一に、自分に合った飲み物を上手く取り入れながら、妊婦生活を楽しんでください!